LAMENT of the LAMB vol.1 (Kei Toume) ISBN:1591828147


紀伊国屋書店で見かけたので購入。
邦題?というか元のタイトルは「羊のうた」(冬目景)。"LAMB"は子羊、"LAMENT"は悲しみ、悲嘆などの意味のほかに悲歌、嘆きの音楽と言う意味もあるらしいので、直訳すれば「子羊の悲しい歌」となり、元の意味をあまり外していないタイトルだ。なぜ子羊"Lamb"なのかと、その理由は"The Silence of the Lambs"*1という名作を意識したからではないかと私は推測する。また、たしかにもともと「羊のうた」なのだが、日本語における複数形の扱いは曖昧であり、この作品の内容を考えると「羊(たち)のうた」であるのは明らかなのだから、英語版のタイトルとしては"Lament of the Lambs"の方がベターじゃないかと個人的には思った。
タイトルだけでうだうだと語ってしまったが、英語版の内容についてもうだうだと語ってみる。
ストーリー自体は変えようがないのでそのままなのだが、欧米人の慣習に合うように大きく変更されている点が一つある。それは何か? 名前の呼び方である。日本人であれば余程親しくない限り名字に「くん」とか「さん」をつけて相手を呼ぶが、欧米人は相手が初対面だろうが年上だろうが、気軽にファーストネームで呼び合う。そういった欧米的な背景を意識して、名前の呼び方だけは変えてあるのだ。例えば八重樫葉*2が高城一砂*3を呼ぶときは基本的に"KAZUNA"または"KAZUNA-KUN"である。
Noooo!(ノ ゚Д゚)ノ ==== ┻━━┻
俺の知っている八重樫さんは最後の最後まで一砂のことを「高城くん」と呼ぶようなシャイなお嬢さんなんだよ(つД`)
名前の呼び方以外にも細かい台詞は意訳されていたりするのだが、よくわからなかったのは元の日本語版と英語版で吹き出しで喋っている人が変わっているシーンがあるところである。例えば、

千砂「こちら水無瀬さん 父さんの古い知り合いの方よ」「で こちらは 一砂 弟よ……」

と言う台詞は

千砂 "This is Minase-san, an old friend of father's."
一砂 "I'm Kazuna, her younger brother."

に変えられている。ここをわざわざ変えた意図がつかめないなー。アメリカ人的には自己紹介したほうがベターだと言うことだろうか(゚Д゚ )?
まぁ、ちょっとおかしいかもしれないが、ここまでは百歩譲るとしよう。しかし、次のシーンの英語はどうにも納得が行かない。第5話のクライマックス、一砂が病気による衝動から八重樫を傷つけるかもしれないと思い、八重樫が描く絵のモデルを続けられないことを告げるシーンがある。ここで一砂は、病気のことを話すわけにはいかず、仕方無しにある思いから次のような台詞を述べる。

俺……笑わない女は嫌いなんだ……
(八重樫、走り去る)
[俺は……何やってんだ……]*4

これが英語版ではこうだ。

I... Uh... I'm not into you like that, alright? *5
(八重樫、走り去る)
[I love you.]

What the hell are you talking about!? (ノ `Д´)ノ ==== ┻━━┻
そこでいきなり"I love you."かよ。心の機微みたいなものは無いのか。それにこの作品、「笑わない女」と言うのが一つの重要なポイントだっつーのに。Noooo!
外国の人と本当にわかりあうのは難しいってことですかね(´Д`)

*1:羊たちの沈黙

*2:やえがし よう

*3:たかしろ かずな

*4:ノローグ

*5:意訳すれば「あんたみたいな人は好きになれねえよ、わかるか?」ってとこですかね(´Д`;)