西班牙語版あずまんが大王と英語版あずまんが大王の比較

id:genesisさんがスペイン語版のあずまんが大王の翻訳を絶賛されており、その紹介の仕方が非常に面白かったので、英語版はどうなっていただろうかと気になりました。そして、早速Azumanga Daioh 1巻(ISBN:1413900003)を買ってきた次第です。
結論から先に言ってしまうと、英語版はあまりひねっていません。脚注も何も無いので、基本的に日本の文化を知らない読者を置いてきぼりにしている印象です。ただ、3巻以降でこれは改善されていて、巻末にTranslator's noteを追加して、翻訳の際に内容を変えた話について日本の文化や慣習を交えながら説明がなされています。この辺は翻訳者が何人か入れ替わった影響だと考えます。
それでは具体的に比較していきます。genesisさんにも許可を戴いたので、フォーマットもほとんどパクっています。
今回の比較対象 - スペイン語あずまんが大王の紹介:id:genesis:20040608
英語版で忠吉さんは「ミスター・タダキチ」に、ポスペは"E-PET"になっていました。後者はよくわからないのですが、E-mailとひっかけたのだろうと思います。サッカーが比較的盛んではないアメリカでゆかり先生が「中田」の代わりに何になっているかというと「ペレ」でした。ペレか。たしかにサッカーの神様ならアメリカ人でもわかるかもしれません。



▼ 丁
http://members.jcom.home.ne.jp/yotuba_hp/az1_41.html

春日歩「なー パンツ一丁の『丁』ってなに?」
春日歩「一『枚』とちゃうの?」
水原暦「突然だな おまえ。なんだ パンツって……」
千尋「拳銃とか一丁って言うよね。たしか」
春日歩「拳銃…… パンツ……」
春日歩「武器と関係が?」
水原暦「もういい だまってろ」

英語版は以下のようになります。スペイン語版同様、接尾語が無いのでその点をどうしたかがポイントになります。なお、()内の日本語は私が適当につけたものなので、その点はご了承ください。

Osaka: Hey! A pair of panties...?
(なー パンツの「ペア」って……)
Osaka: Why do we say "pair" if it's only one?
(なんで一つなのに「ペア」って言うのん?)
Yomi: That's certainly out of the blue! Well... I guess it's cuz' it's got two holes for your legs.
(突然だな。えーっと、足が通る穴が二つあるからじゃないか)
Chihiro: A double-barreled shotgun's got two barrels, but we don't say "a pair of guns."
(二連ショットガンは銃身が二つだけど、「銃のペア」って言わないよね)
Osaka: Panties... Guns...
(パンツ…… 銃……)
Osaka: Is there some sort of conection?
(何か関係が?)
Yomi: That's enough out of you!
(もういい)

"A pair of"という英語の言い回しに応用したんですね。これ以降のものと比べると、少し頭を使った内容だと思います。
ところで英語版の千尋はガンマニアでしょうか?(´∀`)
あっ、一つ大事なことを見落としていました。この翻訳には致命的な欠陥があります。それは、男物のパンツじゃないと武器と関連が無くなってしまうということです。全然ダメですね、これ。



▼ ひっぱって大阪
http://members.jcom.home.ne.jp/yotuba_hp/az1_79.html

周囲 「オーエス!」
春日歩 「オーエスってなんやろう?」
周囲 「オーエス!」
春日歩 「オーエス オーエス
春日歩 「オーエスってなんやー!?」
滝野智 「うるせぇ ひっぱれ!!」

昨日も少し触れたのですが英語圏では綱引きで"heave-ho"と言うようですね。heaveには引っ張ると言う意味があります。

All: Heave Ho! (ヒーブホー!)
Osaka: I wonder what "ho" means... ("ホー"ってなんやろう?)
All: Heave Ho! (ヒーブホー!)
Osaka: Heave Ho! Heave Ho! (ヒーブホー!ヒーブホー!)
Osaka: What does "ho" mean?! ("ホー"ってなんやー!?)
Tomo: shut up and pull! (うるせぇ ひっぱれ!!)

英語では似たような言葉があったので、スペイン語版と比べるとこちらはそのまま訳せてしまったような印象です。



▼ 逃げろ
http://members.jcom.home.ne.jp/yotuba_hp/az1_31.html

滝野智 「なにたのんだー? 私カツ丼ー」
水原暦 「あー 私は――」
滝野智 「あ!! カレーうどんだ!!」

シリコンバレーのあたりはインド人が多いのでカレーは普通に見かけます。また、タイ料理のお店も多いです。

Tomo: What'd you get? I got pork chops!
(なにとったー? 私ポークチョップー)
Yomi: Me? I uh...
(私? 私はー)
Tomo: Hey!! you got curry noodles, didn't you?!!
(あ!! カレーヌードルでしょ?!!)

いや、そのまんまですね。



▼ 喫茶店
http://members.jcom.home.ne.jp/yotuba_hp/az1_83.html

生徒A 「おばけ屋敷
生徒B 「喫茶店

student A: Haunted house (おばけ屋敷
student B: Concenssion stand (コンセッションスタンド(売店))
student C: People do those things every year. (毎年そういう事するよ)
Chiyo: I guess so... (そう思います)
Tomo: Conse- (コンセ...)
Tomo: Conse- (コンセ...)
Chiyo: Any other ideas? (他に何か?)
Tomo: Conse- Conse- (コンセ... コンセ...)
Chiyo: "Conce..." It's spelled like this. ("コンセッション" こうです。)

ちよちゃんが黒板に漢字で「喫」と書いているのはそのまんま残っています。そのため、ともが「き――っ」と切れかかっている台詞が、ちよちゃんの"Conce..."の台詞に置き換えられているようです。
なお、アニメでは"Cafe"と言っていたようですが、はっきりとは確認していません。



▼ 不安
http://members.jcom.home.ne.jp/yotuba_hp/az1_46.html

ト書き 豪邸
滝野智 「……メロンとか持ってきた方がよかったかな?」」
水原暦 「ふ 普通でいいと思うぞ」

英語版は簡単です。

subtitle: Nice house!
Tomo: Maybe we should've brought a gift or something...
(贈り物かなんか持ってくるべきだったかな...)
Yomi: Just act normal, ok.
(普通でいいだろう)

当たり障りなさすぎですね。スペイン語版と比べると独自性が少なくて残念です。むしろ「ナイスハウス!」が気になりました。



▼ 楽しい職業
http://members.jcom.home.ne.jp/yotuba_hp/az1_62.html

滝野智 「先生はどーして先生になったんですか?」
木村先生 「女子高生とか好きだから」

英語版では「女子高生」がどうなるかと言うと

Mr. Kimura: For the teenage girls! I love 'em!
(十代の女の子のために! 私は彼女たちが好きだ!)

teenageは語源から云って「13歳から19歳」ですから、原作よりストライクゾーンが広がってますよ(´∀`)



▼ 大阪人や
http://members.jcom.home.ne.jp/yotuba_hp/az1_18.html

春日歩 「春日歩といいます。よろしくおねがい――」
ゆかり 「だめだめ」
ゆかり 「そんな気をつかって普通の言葉でしゃべらなくていいから! よろしゅーたのみまんがなーでいいよ」
春日歩 「そ、そんなの大阪でも……」
ゆかり 「はい!」
春日歩 「……よ、よろしゅーたのみまんがなー」

英語は米語とかオージー・イングリッシュとか各地の訛りがあるとは思うのですが、書き文字では表現しにくいですよね。

Osala: I'm Ayumu Kasuga. Nice to meet you.
春日歩です。はじめまして。)
Yukari: No, not like that.
(だめ、そうじゃないでしょう。)
Yukari: Relax! Speak like yourself. You can say "Yo, how you doin'?" if you want.
(リラックス! 普通に話しなさい。よろしゅーたのみまんがなーでいいよ。)
Osaka: (Nobody speaks like that in Osaka...
(そんなの大阪でも誰も言わない……)
Yukari: Go ahead! Say it
(続けて言って)
Osaka: "Yo, how you doin'?"
(よろしゅーたのみまんがな)

doin'がアメリカ南部の訛りのようですね。DVDのTranslator Notesでも大阪のアクセントはヒューストンあたりの南部のアクセントみたいなもんだと書いてます。私には真偽のほどはわかりませんが。



英語版については日本のAmazonでも購入できます*1。しかもアメリカで買うのと変わらない値段で。こっちで日本の書籍を買うとだいたい1.5倍くらいの値段がするのでうらやましい限りです(つД`)
ところで、サンノゼ紀伊国屋書店では中国語のコミックも売っていたりするのですが、期待通り笑園漫畫大王*2なるコミックが売っていました。中国語が読めればこちらも調べてみたいところですが、中国語は英語以上にさっぱりわからないので私は断念します。さらに、韓国語版もあるんですね。はてなダイアリーには台湾や韓国にいる人もいらっしゃるようなので、そういった方々に調べていただけたら更なる比較ができて面白いでしょうね(´∀`)