LAMENT of the LAMB vol.2 (Kei Toume) ISBN:1591828155

羊のうたの英語版。昨日のエクセル・サーガ12巻と一緒に購入したもの。
1巻の感想はこちら:id:gentoo:20040501#p1
ざっと流し読んでみたが、1巻のときと同様に細かなニュアンスが変更されていて、非常に問題のある作りになっている。文化的な違いは仕方ないにしても、それ以外でそこは意訳しなくてもいいだろって所まで無理やり違った言葉にしているのがまずいと思う。
それらいろんな違いを含めて、気になった点を無差別に挙げてみる。
まず、あらすじが何故か一砂の一人称になっていた。また人物紹介の「江田夫妻」が"THE EDAS"になっていたところが気になった。また、それらの他に目次などのデザインはほとんど日本のコミックと変わらない作りになっている。
次に中身についていくつか触れてみる。まず、一砂とおばさんがコーヒーを飲んでいたシーンから。

夏子 明日のお弁当 何がいい?
一砂 真っ赤なウインナー
夏子 売ってないわよ

一砂が頭の中では両親代わりの江田夫妻との関係を悩みながら、口先では冗談を言っている。いまどき真っ赤なウインナーなんて売っていないが、こんな話は日本でしか通用しない話だ。これは英語版でこうなっている。

夏子 What would you like for lunch tomorrow? (明日のお弁当 何がいい?)
一砂 A steak. Very rare! (ステーキ。すっげーレアで)
夏子 How about tuna? (マグロはどう?)

赤けりゃイイってもんじゃないと思うが(´Д`;)
今度は八重樫さんとエミちゃんの美術室での会話から。

八重樫 なんか モヤモヤして 頭のどこかに いつまでも ハッキリしない 部分があって この…… ヘンな感じの 原因は……
エミ ……やっぱ あんた 変わってるわ……

これは八重樫さんがモヤモヤした気持ちが晴れるかもしれないと思って、自らの手で髪を切り出そうとしたのをエミちゃんが止めた直後のシーンです。そういう行為があったんで「やっぱ 変わってる(娘だ)わ」と言う台詞になったんだと思いますが、これが英語版ではどうなっているかというと。

八重樫 I'm just down, I guess. I'm not sure about anything anymore, Emi. I don't know why I feel so out of it lately.
(落ち込んでいるみたい。エミ、あたしは今何に対しても不確かで。最近こんなにヘンな感じなのかわからない。)
エミ You've really changed. you know that?
(あんた 変わったわ。気づいてる?)

本当に変わっちまったんかい(´Д`;) これだと、エミちゃんの一筋汗を流した表情と台詞がずれてしまうような気がする。
次は千砂が一砂に一緒に暮らすことを提案するシーンから。

千砂 江田さんは 事情を知ってる のかしら
一砂 ……かもしれない
千砂 それじゃ いずれ あたしから 話すわ

英語版では、

千砂 You think they know already? (江田さんはもう知っていると思う?)
一砂 I wouldn't be surprised. ((知っていても)驚かないよ)
千砂 Anyway... ...You should talk to them. (いずれにしても、あなたは話すべきだわ)

おーい。話をつける人が変わってますよー。
他にも、

千砂 りんごって 一年中 あるのね
一砂 そう だっけ?

英語版では

一砂? I haven't eaten anything today. (今日は何も食べてないんだ)
千砂? Take all you want. (好きなだけ取りなさい)

どっちの台詞かわかんなくなっちゃってるんですけど。別に英語にするうえで変更する必要があった台詞とは思えないんだが。こういう他愛の無い台詞こそ、日常を演出する重要なポイントだと思うが、あまりにも蔑ろにされている感じだ。
もっと重要なシーンでも微妙な齟齬が気になったりと、異文化に自らの文化を伝えることは難しいことだとあらためて思った。